飲食店の売上分析どうする?必要なデータや主な手法・導入すべきツールを紹介

飲食店経営を安定させ、利益を最大化するためには、日々の売上を「感覚」ではなく「データ」で把握することが欠かせません。
売上分析を行うことで、客数や客単価の変化や人気メニュー、時間帯別の混雑状況などを明確にし、集客やメニュー構成の改善に直結させられます。
本記事では飲食店の売上分析に必要なデータの種類、主な分析手法、そして効率的に分析を進めるために導入すべきツールについて解説します。
飲食店の売上分析に必要な6つのデータ
飲食店の売上分析に必要な6つのデータは、主に英単語の5W1Hに基づいたものです。
- What(何が)
- Who(誰が)
- When(いつ)
- Which(どれが)
- Where(どこで)
- How much(いくら)
それぞれどのようなデータがあると便利か具体的に解説します。
購入日|いつ売れたのか?
商品やサービスの購入日は、売上の発生した日付を記録するデータです。
日ごとの売上推移を把握することで、曜日や月ごとの傾向、季節要因による変動を分析できます。
例えば、金曜夜や土日の売上が高い場合は、その時間帯に合わせた人員配置やメニュー強化が可能です。
また、イベントやキャンペーン実施日の効果測定にも活用できます。
年単位の比較を行えば、前年同月比で成長度合いや改善点を明確にすることも可能です。
顧客名|誰が購入したのか?
顧客名のデータは、常連客の把握や新規顧客の分析に役立ちます。
来店頻度や注文傾向を記録することで、一人ひとりに合わせたサービスや提案が可能になります。
特に会員制度や予約システムと連動させれば、誕生日特典やポイント付与など、リピート率を高める施策がしやすくなります。
法人顧客や団体利用の場合も顧客名で管理することで、特別メニューの提案や次回予約につなげられます。
営業担当者名|誰が売ったのか?
営業担当者名のデータは、接客スタッフや販売員ごとの売上成績を把握するために重要です。
担当者ごとの売上を分析することで、接客スキルや提案力の差を見つけ出し、教育や配置の改善につなげられます。
成績優秀なスタッフへのインセンティブや、苦戦しているスタッフへのフォロー計画も立てやすくなるでしょう。
顧客との信頼関係が強い担当者を特定し、そのノウハウを共有すれば店舗全体の接客レベル向上にもつながります。
商材名|何が売れたのか?
商材名は、売れた料理やドリンクの種類を明確にするデータです。
人気メニューや売れ筋商品を特定すれば、在庫管理や仕入れ計画の最適化が可能になります。
売上構成比を分析すれば、利益率の高いメニューを強化したり、注文の少ないメニューを改善・廃止する判断が可能です。
季節限定商品や新メニューの販売状況を追跡することで、商品開発の精度も高められます。
購入数|いくつ販売したのか?
購入数は、各メニューや商品が何個売れたかを示すデータです。
販売数量を把握することで、原材料の発注量や仕込み量を適切に調整できます。
客数や客単価と組み合わせれば、集客効果やキャンペーンの成果を数値で評価することも可能です。
数量の推移を分析すれば、売れ行きの鈍化や急増を早期に察知し、販促や在庫対応を迅速に行えます。
購入場所|どこで売れたのか?
購入場所のデータは、店舗ごとや販売チャネル別(店内飲食、テイクアウト、デリバリーなど)の売上分析に有効です。
チャネル別の売上構成を知ることで、需要の高い販売方法に人員や宣伝を集中できます。
また、立地や客層によって売れ筋が異なる場合は、その特性に合わせたメニューや価格設定が可能です。
地域イベントや観光シーズンに合わせた出店計画にも活用できます。
単価|いくらの売り上げになったのか?
商品やサービスの単価は、1つの商品や注文ごとに発生した売上金額を示します。
平均単価を算出すれば、客単価の向上施策や価格戦略の検討がしやすくなります。
例えば、高単価商品の提案を強化したり、セットメニューや追加トッピングで単価を引き上げることが可能です。
単価の変動を追えば、値上げや値下げの影響を定量的に判断できます。
飲食店の売上分析に欠かせない3つのツール
飲食店の売上分析には、下記3つのツールが欠かせません。
- モバイルオーダーシステム
- 会計ソフト
- BIツール
それぞれ飲食店の売上分析において「どこでどう使うのか」を解説します。
モバイルオーダーシステム
モバイルオーダーシステムは、客席やテイクアウト受付、デリバリー受注の場面で活用できるツールです。
注文時点でメニューや数量、時間帯、卓番号、受取方法などの情報が自動的に記録され、POSシステムと連携されます。
時間帯別や販売チャネル別の売上、回転率、平均注文数、人気メニューの傾向を分析できます。
さらに注文導線が短くなることでピーク時の販売機会損失を防ぎ、売上の最大化に繋げやすくなります。
クーポン配布やおすすめ商品の表示など販促施策の効果測定にも有効です。
会計ソフト
会計ソフトは、店舗のバックオフィス業務において売上データと経費データを一元管理する役割を果たすツールです。
POSやモバイルオーダーから得た売上情報を仕入れや人件費、家賃、水道光熱費などと自動で仕訳し、月次損益を可視化できます。
原価率や限界利益、損益分岐点、キャッシュフローを算出し、価格改定やメニュー構成の見直しに活用できます。
さらに店舗別や業態別の部門管理を設定することで、黒字赤字の要因を明確に把握できます。
BIツール
BIツールは、店長や本部が売上や経営指標をリアルタイムで把握するための分析プラットフォームです。
POSやモバイルオーダー、会計、在庫、シフト管理などのデータを統合し、客数や客単価、平均提供時間、廃棄率、在庫回転率、スタッフごとの販売実績などを可視化します。
曜日や時間帯、天候、キャンペーンなど複数の条件を組み合わせて傾向を分析できます。
発注量や人員配置の最適化に役立つツールです。
売上急落や原価率の悪化など異常値を検知し、即時対応できる仕組みも構築できます。
飲食店の売上分析における主な手法5選
飲食店の売上分析には、下記5つの手法が役立ちます。
- RFM分析
- ABC分析
- 3C分析
- バスケット分析
- 5P分析
それぞれの定義や手法をチェックし、店舗の現状改善に役立てましょう。
RFM分析|顧客の価値を3つの指標で分類する手法
RFM分析は、顧客を「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの指標で分類する手法です。
飲食店では、来店日・来店回数・利用金額をもとに顧客をグループ分けします。
例えば、最近来店し、頻繁に利用し、単価も高い顧客は「優良顧客」と判断し、特典や限定メニューでリピートを促します。
逆に、最近利用がなく頻度や単価も低い顧客は休眠客として再来店促進施策を検討します。
データを顧客ごとに整理することで、販促や接客方針を効率的に立てられます。
ABC分析|売上や利益に基づき商品を3ランクに分類する手法
ABC分析は、売上や利益の貢献度に応じて商品をA・B・Cの3ランクに分類する手法です。
飲食店では、メニューごとの売上構成比や粗利額を算出し、上位20%をAランク、中間をBランク、下位をCランクとします。
Aランクは安定供給と品質維持、Bランクは販促で伸ばし、Cランクは改善や削除を検討します。
限られた仕入れや調理リソースを効率的に使うための意思決定に役立ちます。
原価率や調理時間などの条件を加えることで、より実践的なメニュー構成が可能になります。
3C分析|市場環境を3つの視点から分析する手法
3C分析は、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点から現状を分析する手法です。
飲食店では、ターゲット層の嗜好や来店動機を把握し、競合店舗の強みや弱みを比較します。
その上で、自店舗の立地、メニュー、サービス力などを客観的に評価します。
例えば、近隣競合が価格勝負なら、自店は品質や雰囲気で差別化するといった戦略が立てられます。
3C分析は立地選定や新メニュー開発、販促戦略の方向性決定に有効です。
バスケット分析|同時購入されやすい商品の組み合わせを見つける手法
バスケット分析は、顧客が同時に購入する商品の組み合わせをデータから見つけ出す手法です。
飲食店では、メイン料理とサイドメニュー、ドリンクの組み合わせを分析します。
「ハンバーグを注文した顧客はライスとスープを一緒に頼む傾向が高い」というような関連性を見つけられます。
この結果を基に、セットメニュー化やクロスセル提案を行うことで、客単価を向上させられます。
注文データを継続的に分析すれば、季節や時間帯ごとの組み合わせ変化も把握できます。
5P分析|マーケティング要素を5つの視点で整理する手法
5P分析は、「製品(Product)」「価格(Price)」「場所(Place)」「販促(Promotion)」「人(People)」の5つの視点で戦略を整理する手法です。
飲食店では、提供する料理の品質や特徴、価格設定、立地や販売チャネル、広告宣伝やSNS活用、人材育成や接客品質を総合的に見直します。
それぞれの要素をバランスよく改善することで、集客力と顧客満足度を同時に高められます。
新店舗開業やリニューアル時にも有効なフレームワークです。
飲食店の売上分析における具体的なステップ
飲食店の売上分析は、下記6つのステップで行います。
- 売上分析の目的とゴールを決める
- 今抱えている課題を洗い出す
- 仮説を立てて解決策を考える
- 解決に必要なデータを収集する環境を整える
- 期間を決めて施策を実行する
- PDCAサイクルを通して施策を継続的に改善する
それぞれのステップにおいて決めるべき内容や注意点を紹介します。
①売上分析の目的とゴールを決める
最初に、売上分析を行う目的と最終的なゴールを明確にします。
「客単価を10%アップさせる」「ランチタイムの来客数を20人増やす」など、具体的な数値で設定することが重要です。
目的とゴールが曖昧だと、分析結果の活用方法もぼやけてしまいます。
店舗の経営方針や店舗の現状と照らし合わせながら、達成可能で測定可能な指標を決めましょう。
②今抱えている課題を洗い出す
次は、現状の売上や客数、客単価などの数値から、店舗が抱える課題を整理します。
「ランチの稼働率が低い」「一部メニューの利益率が低い」など、問題を具体的に言語化することが重要です。
スタッフや顧客からのフィードバックも合わせて確認することで、数値だけでは見えない課題も発見できます。
課題は優先度をつけて整理し、後の施策に活かせる形にまとめましょう。
③仮説を立てて解決策を考える
次は、洗い出した課題に対して、「なぜそうなっているのか」という仮説を立てましょう。
例えば「平日のランチが少ないのは周辺企業への認知度不足ではないか」など、原因を具体的に想定します。
仮説に基づいて複数の解決策を考え、実行のしやすさや効果の大きさで優先順位をつけます。
この段階で現実的な予算や人員リソースも考慮すると、後の実行がスムーズになります。
④解決に必要なデータを収集する環境を整える
立てた仮説や解決策を検証するために、必要なデータを収集できる環境を整えます。
POSシステムやモバイルオーダー、会計ソフト、アンケートなどがおすすめです。
売上だけでなく、時間帯別・メニュー別・チャネル別など詳細なデータを取れる状態にします。
データ形式や更新頻度も揃えておくことで、分析精度が高まります。
⑤期間を決めて施策を実行する
店舗の売上改善の施策は、実行期間を決めてから取り組みましょう。
期間が不明確だと効果測定が曖昧になり、改善点が見えにくくなります。
例えば「3か月間ランチセットを割引価格で提供する」といった形で期間を設定します。
その期間中に必要な人員や在庫の準備も事前に整え、施策開始後の運用を安定させましょう。
⑥PDCAサイクルを通して施策を継続的に改善する
施策実行後は結果を分析し、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Act)のサイクルを回します。
効果が出ている施策は継続・拡大し、効果が薄い施策は原因を見直して再度試すことが大切です。
このプロセスを繰り返すことで、売上改善を一時的なものではなく継続的なものにしましょう。。
データに基づいた判断を習慣化することが、店舗成長の土台となります。
飲食店の売上を分析するときの注意点
飲食店の売上を分析するときは、下記3つのポイントを意識する必要があります。
- 一度施策を決めるだけでなく継続的改善に努める
- スタッフや顧客の意見も取り入れる
- 環境を整えるには初期投資も必要と考える
飲食店の売上分析において、データ以外に欠かせないポイントを見つけましょう。
一度施策を決めるだけでなく継続的改善に努める
飲食店の売上分析は、一度きりの取り組みでは効果が一時的なものになってしまいかねません。
顧客の嗜好や市場の流行、競合の動きは日々変化するため、定期的にデータを更新し、施策を見直す必要があります。
例えば、季節ごとのメニュー販売数や客単価の変化を追い、売れ筋と不振メニューの入れ替えを行うことが有効です。
施策改善のサイクルを短くすることで、トレンドへの対応も迅速になります。
データの分析と施策の実行、そして効果測定を繰り返すPDCAを回し続けることが、長期的な売上向上につながります。
スタッフや顧客の意見も取り入れる
数値だけでは把握しきれない改善点を見つけるには、スタッフや顧客の声を活用することが重要です。
スタッフは日々の接客や調理を通じて、現場での課題やお客様の反応を肌で感じています。
顧客アンケートや口コミを分析すれば、満足度や不満点を明確にすることが可能です。
例えば、売上データ上では好調なメニューでも「味が濃い」「提供が遅い」といった不満が多ければ、改善余地があります。
こうしたリアルな声をデータ分析と組み合わせることで、より効果的な施策を導き出せます。
環境を整えるには初期投資も必要と考える
正確かつ効率的な売上分析を行うには、POSレジや会計ソフト、BIツールなどの導入が欠かせません。
それぞれには初期費用やランニングコストが発生しますが、手作業での集計や分析に比べ、圧倒的にスピーディで精度の高いデータ活用が可能になります。
POSレジを導入すれば、日別・時間帯別・商品別の売上データを自動で集計でき、人的ミスを減らせます。
また、分析ツールを活用すればデータの可視化が容易になり、意思決定も早まります。
初期投資は、長期的な効率化と売上向上への先行投資と捉えるべきです。
飲食店の売上分析に関してよくある質問
最後に、飲食店の売上分析に関してよくある下記3つの質問へ回答します。
飲食店の売上分析はエクセルだけでもできる?
小規模店舗の場合、エクセルだけでも売上分析は可能です。
特に小規模店舗や分析の経験が浅い段階では、エクセルを活用することで十分にデータ整理や集計ができます。
日別・週別・月別の売上推移、商品別売上、時間帯別売上などを関数やピボットテーブルで集計すれば、売れ筋や課題が見えてくるでしょう。
ただし、店舗数が多い場合や分析項目が増えると、手作業では時間がかかりミスも増えます。
そのため、中長期的にはPOSレジや専用の分析ツールを導入し、自動化や可視化を進めると効率的です。
飲食店の売上分析はどれくらいの頻度で行うべき?
理想は毎日確認し、最低でも週1回は全体を振り返ることです。
毎日の売上チェックで、急な客数減や特定メニューの売れ行き低下など、異変をすぐに察知できます。
週単位では曜日別の傾向やイベント効果を分析し、来週以降の仕入れやシフトに反映させましょう。
月単位の振り返りでは、長期的な傾向や施策の成果を評価できます。
頻度が低すぎると改善のタイミングを逃すため、短期・中期・長期のバランスを意識して分析を習慣化することが重要です。
飲食店の売上分析後はまず何を改善するべき?
売上分析後は、最もインパクトの大きい改善ポイントから着手することが大切です。
例えば、売れ筋商品の原価率が高すぎる場合は仕入れ先や価格の見直し、不振メニューが多い場合は削除や改良を検討します。
また、来店客数が減っているなら集客施策、客単価が低下しているならセットメニューやアップセルの導入が有効です。
改善の優先順位は「費用対効果」と「即効性」で判断し、次に実行スケジュールと担当者を明確化して行動に移します。
飲食店の売上分析には「目標設定×環境整備」が欠かせない
飲食店の売上分析では、まず明確な目標設定が欠かせません。
「売上10%アップ」「ランチ客数増加」などゴールを具体化することで、分析の方向性が定まり、優先すべき施策も明確になります。
正確なデータを継続的に集められる環境整備も重要視し、POSレジやエクセルを使った記録体制を整え、売上や客数、商品別データを日々蓄積することで、変化や課題を早期に発見できます。
「目標設定×環境整備」を土台に、仮説検証と改善を繰り返すことで、数字に基づいた戦略的な店舗運営が可能になるでしょう。